The LAND UNKNOWN 夏は、お化けと恐竜ものが恋しい季節です。恐竜ものと申しましても 『恐竜100万年』や『ジュラシックパーク』といったメジャー作品でなく、ちょっとズレた作品がこれまた味なのですね。

今回はクラシックな秘境探検もので恐竜を愉しみましょう。1957年ユニバーサル映画『The LAND UNKNOWN』です。

日本的にいうと『知られざる世界』とでも申しましょうか。南極の向こうに熱帯の大地を発見するという、エドガー・ライス・バローズのカプローナみたいな世界が舞台です。
大まかな設定は、調査隊が未知の世界に迷い込んで、恐竜たちとご対面という定番なやつで、ちゃんと先客で現地化したワイルドなヒゲおじさんも登場します。この伝統は2017年のキングコング『髑髏島の巨神』でも守られていました。
どうです、この異世界感がすばらしい。

作画とミニチュアで作られた熱帯っぽい風景は湿気ムンムン、モヤった濃淡は白黒作品のいいところですね。
そして秘境ものには、吸血植物も欠かせません。

これがまた、よくできているのです。霧の中を不気味なツルがうごめく様子は自然で、襲われる女優さんとのからみもよく合っています。特撮モノは、役者さんの演技と作り物の質が、うまく調和しないと違和感を生じて、チャチいとか何とか言われちゃうんだと思います。だから、以前控えた『THE GIANT CLAW』
(鑑賞記26)のバカっぽい鳥なんかを見ると「俳優さんに謝れ!」という気持ちになるのです。
登場する恐竜は、半分作り物で、半分本物のトカゲ。実はここが惜しくて、作り物だけで撮ったほうが、作品として統一感があったように思うんですよね。両方混ぜちゃったものですから、印象がちょっと濁っちゃったかな?なんて思いました。本物のトカゲが、刺身のツマ程度の扱いならまだしも、意外と凄い迫力で、主役を食っちゃう勢いでしたから。

トカゲなんて段取り通り動くわけないのですが、監督に指示されたように死闘を繰り広げるんです。私の見たところ、たぶん下になっている一匹は死んでるな、かわいそうに。

アップにしてもこの迫力。そりゃそうだ、本物のオオトカゲですから。でも、上でも述べましたが、この決闘は本来前座なんです。目立ったけれども。なぜなら、一行を襲う肉食恐竜がいよいよ登場するんですから。
待ってました!ティラノサウルス。

これが嬉しいことに着ぐるみで、ヒクヒクする鼻や口の濡れた感じや、リアルな瞬きなどがよくできているのです。思わず唸るほどよくできているのですが…
ボディラインが残念なのです。

惜しいでしょう?じつに惜しい。リアリティを求めているんじゃないのです、カッコイイかどうかなのです。尻尾を引きずる姿勢はいい、むしろその方がいいのですが、やはり首が無い(短い)、猫背というのは、あまり強そうではありませんね、湯上りのステテコおやじの形です。でもクセになる味ではあります。
そしてもう一匹、重要な役どころの首長竜が出ます。

劇中ではエラスモサウルスと呼ばれますが、これも良く出来てますでしょう?
でも、首が動かないんですよ、首長竜なのに残念だなあ。これら二匹ともディテールはいいんですが、全体が惜しいんです。
最後は、命からがらヘリで脱出に成功する御一行様だが、最後に待っていたのは燃料切れ。母艦の手前で墜落するんですが、一分も経たぬうちにすぐ救出されて全員無事。それなら要らないだろここも。
そしてすぐイチャイチャするアメリカ人。

アメリカ製怪獣映画の終わりはいつもこうですね。様式として出来上がっているので、ある意味安心します。

夏の夜の冒険劇場、結構楽しかったです。
僕はやっぱり、CGよりもこういうやつが好きですねえ。なんか作りたくなるのです。
テーマ:♪♪生活を楽しむ♪♪ - ジャンル:趣味・実用
- 2020/08/22(土) 11:05:14|
- 視聴鑑賞
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
GODZILLA VS. MONSTER ZERO 竹下内閣時代、1ドルが100円を切っていたころ、出張先のアメリカで円高をいいことに買いあさっていたVHSビデオの一本です。
今回の作品はこちら。

ご存知『怪獣大戦争』の北米向け海外版です。素敵なジャケットですね、昔の怪獣画報の絵を彷彿とさせてくれますが…主役のように映っている赤い作業着のアベックは誰だ?
まあ、いいでしょう。
“モンスター・ゼロ”は、2019年作品『GODZILLA King of the Monsters』に登場する記憶に新しい呼び名ですが、この映画の中で、何でもナンバリングするX星人がキングギドラをこう呼ぶところから始まりました。つまりは“ゴジラ対キングギドラ”です。
オープニングのタイトルも英文字で書かれていますと、1960年代SF風で洋画を観るような気分になります。

まずは序曲、日本オリジナル版は、勇壮な『怪獣大戦争マーチ』で始まりますが、こちらのほうは、暗いイメージのミステリアスな音楽で宇宙人侵略ものの雰囲気を漂わせています。

物語の方は、オリジナルに同じだと思います。英語はわかりませんが、セリフを覚えるほど観てますもんですから、違和感がなければその通り解釈してしまいます。声の吹き替えも良かったですね、特に田崎潤さんなど、ご本人と思うほど自然な出来でした。

もちろん特撮も良いです。ことに潜伏していたX星人が湖から姿を現すところは真に見事な出来栄えで、劇中一番の名場面かと思います。

モンスター・ゼロこと“キングギドラ”は、デビュー二作目とあって、まだまだ元気!泳ぐように空を飛んで地上を破壊し尽くします。

昔のキングギドラを見るにつけ、つくづくよく考えられた強敵だなあ、と実感します。ゴジラ三頭が火を噴きながらラドンのように空を飛んでるのかと思うと、これは間違いなく強いです。デビュー作『地球最大の決戦』で、遠くに小さく見えるだけで「ギドラだー!」って戸締りをする人が出てきますが、あれは空襲を知っている世代の実際の恐怖と不安が描かれているんだと思います。
で、話を戻しますと、今回の作品、残念なのが地球軍の反撃場面のBGMです。不協和音とAサイクル光線砲のダブル攻撃開始の際に『怪獣大戦争マーチ』が威勢よくかかるかと思いきや、木管楽器の静かなパートから入るんです。さすがにここはガッカリしました。

X星人の末路はオリジナル版と同じです。コンピューターの指示に従って行動する彼らは、自分でものを考えないから、コンピューターが狂って、脳みそも不協和音でやられて、あえなく全滅。

我らだって考えてみれば、すでにAIの実用化が始まっています。近い将来、それがエスカレートしていって、我らが自分でものを考えなくなったとしたら、きっと痛い目に遭うでしょうね。

ギドラが逃げ去って、ゴジラとラドンが海底に沈む、日本版と同じ終わり方です。あっという間の93分。なぜか、何回観ても面白い東宝特撮60年代作品、英語で見ると、また違った趣が味わえます。
そうそう、ここで気になる“ゴジラのシェー”はカットされていたか?
いいえ、ちゃんとやってました。でもシェーを知ってるアメリカの視聴者が一体どれだけおられるでしょうかね?でも大丈夫、シェーのギャグを知らなくても、そこは中島名人の演技です、ギドラを撃退した歓喜の表現として十分理解してもらえたことでしょう。
テーマ:趣味と日記 - ジャンル:趣味・実用
- 2020/02/02(日) 10:54:35|
- 視聴鑑賞
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
Godzilla: King of the Monsters 胸が高鳴るひと時は、いつも同じ。お目当ての映画がかかっている劇場の前に着いた時。

ゴジラの新作を観てきました。新作なので内容には触れませんが、ネットの時代です、予告編をご覧になって、みなさんおよそどんな作品かはお察しのことと思います。ゴジラはおろか、ラドンやキングギドラまで登場するかつて栄華を誇った東宝の怪獣大乱闘となっています。

どうせアメリカ人がいじった日本の怪獣なんて、スナック菓子みたいになっちゃうんだろうな?と思ってましたが、お詫びします。しびれました。日本の怪獣をここまで愛してくれていたなんて。日本の怪獣映画をここまで解かってくれていたなんて。これが感想です。ことに我ら50代のおっさんたちは、子どものころ観たスター怪獣たちが、さらにパワーアップして世界を舞台に大暴れなんて、夢のように痛快!ラドンの衝撃破壊力など博多を襲った時以来の迫力でした。思えばラドンって怖いよね、ゴジラは歩いて移動だけども、ラドンなら本気で飛べば一日で日本中を破壊できるという災害としては最恐の怪獣です。モスラも出るよ。幼虫から成虫に変身する設定はオリジナルのまま。羽化した時の美しさは、怪獣なのに人々が逃げもせず、うっとり見とれてしまいます。ギドラにゴジラは宿命のライバル、壮絶な戦いが見ものです。そして、え?ええ?っと身を乗り出してしまうような味な演出が散りばめられていて我らオールドファンの心をつかみます。

本作は、特撮ファンなら本編はもとより、エンドロールまで一滴残らず楽しめる仕掛けになっています。あぁ、これだけは言っちゃおうかな?クレジットの中に“Akira Ifukube”と“Yuji Koseki”の文字がありました。何が起こるかわかりますね?さあ、劇場に行きましょう。私ごときがあれこれ申し上げますまい、ご覧になっていただきたい。日本の怪獣を賛美されているようで誇らしい気持ちになります。
テーマ:♪♪生活を楽しむ♪♪ - ジャンル:趣味・実用
- 2019/06/10(月) 12:05:51|
- 視聴鑑賞
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
THE GIANT CLAW 公開が迫るアメリカ製ゴジラ映画の新作『Godzilla: King of the Monsters』、とても楽しみです。わくわく胸を躍らせながら公式サイトで予告編を見ると、ラドンの表現がいいですね。まさしく空の大怪獣、今度の監督さん、ラドンの本質をお分かりのようで嬉しい限りです。そんな中、急に観たくなったのは、ラドン第一作目と同じころ(1957年)に作られたアメリカ映画『THE GIANT CLAW』です。

平たく申せばアメリカ版、空の大怪獣。

事件の展開、登場人物などなど、正統派の怪獣映画となっております。
だいたい主人公が熱い男で、恋人みたいな姉ちゃんがセットになっている。そして中盤に登場する、事件解決にヒントをくれる科学者。

本邦で喩えますと、スマートでクールな平田明彦さんというよりも、『大怪獣ガメラ』の船越英二さんみたいな重厚知的なイメージです。
そして軍人も必須。

ここは田崎潤さんか、藤田進さんといった武闘派のイメージで役者はそろいました。
事件の展開も基本に忠実。なぞの連続航空機事故が起こり、同時に未確認飛行体が目撃される。そして少しずつその正体に迫ってゆき、ついにフィルムに収められたその飛行体を確認するのだが…
大空に舞う鳥のような影。

やがて大きくなる巨鳥のシルエット。

ヒロインが恐怖に顔をゆがめる。

彼女が戦慄したものは何か!

出た!ギャグか!アホな鳥だろ!顔がアホだ。なんだその頭の毛は、大五郎か?オバQかよ。テキトーに植毛したな、バカにしやがって。女優さんの熱演に謝れ!
…と言いたくなるようなデザインと作り物です。役者と構成展開がちゃんとしているのに、まったく残念です。
正体が明かされると、あとはこのバカ鳥の大暴れ。中でも戦闘機との空中戦は見ものです。

スピードと迫力にあふれる戦闘機と、たよりないバカ鳥のからみがヤバイ。

掃除機のホースみたいな首にアホな顔、なんだその頭の毛は、全然風を切ってないじゃないか。むしろ前に垂れ下がっているとは何事だ。おまけに鳴き声は下品極まりない、グエアグエア…と、ああ、見れば見るほど腹が立つ。

こっちを見るな!
ん?でもよく見ると、目玉や鼻孔がヒクヒク動いているぞ。という事は、アホな顔の中には中々凝ったギミックが内臓されているんだな、でもそれが全然生かされていないのが痛い。アホな顔が全部食っちゃってる。
こうしてみますと、つくづく、初期の東宝怪獣の高い品格が再認識されますね。ラドンやゴジラ、バランなど、声も個性的で美しいですから。
クライマックス、ニューヨークの摩天楼、エンパイヤビルで見栄を切るのは『キングコング』への憧憬か。

日本の怪獣なら東京タワー、アメリカ製ならエンパイヤー、これ基本です。そんでまたスケール感を無視した、ちゃちな合成だなぁ、と思っていたら…

なんと、突っついて壊した!ミニチュアだったのです。ここは驚きました。いい意味で。
最後は新兵器を打たれて、あっけなくジ・エンド。

すぐにイチャつくアメリカ人。お決まりのパターンです。

まあ、悪口をいっぱい言ってしまいましたが、残念なのは主役たるべき怪鳥のデザインだけです。これがカッコよかったら完成度は増しましだったと思いますが、もしかしますと、これは印象に残すための作戦だったと言えなくもないです。普通の出来だったら、ありがちな地味な作品として埋もれてしまっていたかもしれません。そう、ファミレスのお料理は、どなたがどれを召し上がっても美味しくて優等生でありますが、クセになりませんよね。そういう意味では、本作はクセになるといっていいでしょう。ストーリーがよくあるパターンなだけに、怪獣デザインに奇抜を狙ったのかも知れません。バカっぽい鳥に真剣に対策を講じる人類との対比こそ、この作品の見所かもしれません。
心の奥に、造形化したら受けるだろうな?みたいな嫌な意欲が芽生えてくるところが、また嫌ですねえ。
テーマ:趣味と日記 - ジャンル:趣味・実用
- 2019/05/27(月) 11:21:48|
- 視聴鑑賞
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
晩秋の里・草鞋〈わらじ〉 年に一度ご紹介しております、私の芸の上での師匠格である岸本和雄さんの切り絵作品。最新作令和第一号を拝見してまいりました。今回も緊張感あふれる構図と刃物裁きに息をのみます。

枯れた柿の枝に一足の草鞋。あぁ…冬の足音が聞こえる、といったイメージがふっと沸き起こる、とても日本的で、かつ季節感あふれる情景。
なにげなくそこに置いてあるような草鞋ですが、そのガサガサした質感は、切り絵の持ち味を存分に愉しめる素材です。

写実とデフォルメの間と申しましょうか、近くに寄れば、刃物が描く力強いうねりが藁の固さを感じさせ、離れて見れば、さもそこに置いてあるような静けさが漂います。丁寧に刻まれた縁の細かなささくれは、脳内の触感覚を刺激、チクチクした、いかにも実物を触ったかのような錯覚に陥ります。
水分を失った柿の枝。

濃淡の許されない黒の単色で描く切り絵において、静物の実体と影を巧みに描く。輪郭を細かくぼかした影が、枯れ枝を立体的に見せています。
そんな、色や手触り、匂いまで感じさせる本作に温もりを与えているのが、外周を囲む枠線。

直線ではなく、ちぎったような細かい刻みで囲まれています。もちろんこれも刃物による仕事。このともすれば見落とされてしまいそうな場所に、こだわりの手を加えることによって、画題である日本の晩秋が、より温かいものに感じられてくるように思います。
本作品は、5月15日まで、埼玉県所沢市の市民ギャラリーに展示されています。
→
第9回 銀杏の会切り絵作品展 今なら実物が鑑賞できますのでぜひ。
テーマ:趣味と日記 - ジャンル:趣味・実用
- 2019/05/11(土) 10:17:06|
- 視聴鑑賞
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
前のページ 次のページ