Q&Q 手巻き時計 いつもお世話になっている、お得意先の木村さんご所有のキャラクター時計二点。
前回のキャラクターデジタルに続きまして、今回は写真右側の時計を拝見しましょう。

駆動形式は手巻き。1976年生まれのQ&Qブランドですが、購入時期を伺いますと、このモデルは中でも初期の物です。
裏返してみましょう。

一本のナイロン帯が貫通しています。このようなベルトスタイルを“引き通し”といいまして、ベルトの着せ替えがしやすく、色を取り換えながらファッションをたのしめる利点があります。
ベルトをはずしまして、裏を拝見しましょう。

刻印内容を読みますと裏蓋のみステンレスで、ケースはそれ以外の材質ということですが、周りのボツボツから察しますと亜鉛製ケースのようです。
前回のデジタルもそうでしたから、間違いないと思います。
それでは裏蓋を開けて… と思いましたがこじ開け口(ナイフを入れる隙間)が見当たりませんので、ちょっと引っ掛かりを作らせていただきました。

タミヤの精密ノコで少し削らせていただきまして、こじ開けでパコンを開けましたら、な、な、なんと!

ワンピースケースではありませんか!もともとステンレス蓋を開けられないようになっていたわけですね、余計なことをしてしまいました。しかし構造の察しはつきました。なるほど、腕に触れる部分をステンレスで保護し、亜鉛の腐蝕を防いでいるわけですね。しかもこれでしたらケースと裏蓋の隙間から水気か侵入する心配はありません。
そして本品も日本製です。
しかし骨の折れそうな点がひとつ、ムーブメントを見るには風防を外さなければなりません。
そこで知人を頼り、特殊な工具を借りまして…

奮闘努力の結果、ついに風防を開けました。
3時半あたりに見える文字板の切り欠き。

ここにピンをさしてりゅうずを外すと、ムーブを取り出すことができます。
針を外しますと、そこには可愛らしい女の子とウサギのイラスト。

このキャラクターは何?
“Pansy & Whites” ??? インターネットでも引っかかりません。
トレードマークやコピーライトが見当たらないので、専用のオリジナルイラストなのかも知れません。
ムーブメントを拝見しましょう。

普通、3~4枚に分割される受け板が、一枚にまとまられています。
そして、小窓から覗く赤い樹脂パーツ。

ここは組立困難を覚悟の上、開けて見せていただきましょう。

おおー!なんと脱進機がポリ製です。テンプ、アンクル、ガンギの三者が完璧なチームとなって一体化されています。ガンギもアンクルも芯まで一体成型樹脂なので衝撃で折れる心配もありません。精度を度外視すればここまで追い込めるのかと感嘆するほど見事な設計で、これは確かに時計です。
時計を安く作って、多くの人に広く親しんでもらいたいという思想の現れを感じます。
それでは、6個の軸を一枚の受け板にすべて収めるという困難を乗り越えて、元の姿に戻しましょう。

Q&Qのキャラクターウォッチです。入手したものの使い道に困っていたチャーム付きのベルトを合わせてみました。
可愛らしい腕時計です。中の油も生きていましたので、これからも実用に問題ありません。
本日の控え
CBM Q&Q cal.2673 手巻き0石 1980年前後(推定) でした。
聞けば木村さんの妹さんがお祖父様に買ってもらった時計なんだそうです。これを見ればおじいちゃんを思い出す。時計というものは持ち主にとって記憶装置の役目も果たすことがあるのです。
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- 2015/10/14(水) 12:06:40|
- 時計
-
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| コメント:2
いやー、これは感動です!
わたくし浅学でありますが、最近脱進機がシリコン製画トレンドとか?間違ってたら済みません。
その先を行く設計?ですか。
- 2015/10/15(木) 12:47:58 |
- URL |
- キムラ #-
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お世話になります。
さすが何でもご存じで…
ですが少し違うのはただ今では精度追及のために変形しにくいシリコンヒゲ(テンプの中の渦巻き)を採用しているメーカーがあるということでして、今回のモデルは、比較的デリケートで壊れやすい脱進系三部品がセットでポリパーツになり、壊れにくくなっているという点です。赤い連結がせっせと動いている様は、なかなか可愛らしいものでした。
時計設計というものの幅の広さを感じさせられました。
- 2015/10/15(木) 18:07:59 |
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- 柊horii #-
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