切り絵という芸術 若い頃からお世話になっている恩ある方が切り絵師をなさっておりまして、本日、その作品展におじゃましました。

看板の文字に縦線がひいてありますね、これも切り絵です。つまり黒い部分がすべて繋がっているということなのです。
ギャラリーの入口、特設されたお迎えの作品こそ恩人のお作で
『雨中雄鶏図』。

ペン画ではありません。黒い紙を切り出した絵です。
羽毛の流れ、岩の影、見事な技巧にまず驚愕。恥ずかしながら、わたくし、切り絵作品を初めて生で拝見しました。
そして左上のほう、雨の表現にご注目、下地の白い紙の表層部分を筋掘りして表現した線。影だけが描く透明感が見事です。(上の写真では見えるように画像加工してあります)
画題となっている『雨中雄鶏図』は岸駒〈がんく〉の筆によるこちらですが…

ここから色彩という要素を取り除いて、白黒の面だけで雄鶏の佇いが見事に描かれています。想像力と変換力の妙技と申せましょう。
本作は2013年の作品です。
会場で新作を拝見しました。
こちらも画題は雄鶏、伊藤若冲
『南天雄鶏図』、まずは元の絵を見ましょう。

金地に黒、赤、白の配色鮮やかな本作から、色彩を取って、面のみで描かれたのがこちら。

場内の照明が反射して、ところどころ飛んでしまいましたが、見事な細密技巧がおわかりいただけましょう。
軍鶏の羽毛の繊細さと荒々しさの強弱、南天の実を輝かせるハイライトの一つ一つ。

南天の実のハイライトは、一粒が0.4ミリほどなんだそうです。気の遠くなる作業です。
私が思わず、ふぇ~っと息を吐いたのがここ、軍鶏の輪郭です。

和紙をちぎったような微細なギザギザ、これも刃物で小刻みにカットしたものだそうです。
そして画題は変わります。
『野菜・笊-2』 身近な素材を切り取った静物画ですが、もう一度思い出しますと、これが黒い面でできているということです。水墨画ではありません。従って濃淡はカットした線のみでできているはずなのですが、なんとグレーに見える部分があります。これも技巧のひとつ。奥深い切り絵の世界です。
野菜の質感。

ピーマンの照り、キャベツの葉脈、写実とデフォルメの狭間と申しますか、見る者のイマジネーションに語りかけます。
そして、この方の作風の特徴である枠取り。

右端の中あたり、蕪の葉の先端がフレームに接しています。つまり、一枚ものであるという証しなのだそうです。
実にお見事な作品の数々、新しい芸術に触れた充実の休日でした。
これまでご紹介してまいりました作品は、私の芸の上での恩師であります、岸本和雄さんの手によるものです。
お作を拝見しながら、丁寧に説明してくださいました。
そして、お土産に下さった絵ハガキ。

新作二点が印刷された絵ハガキです。
私もいろいろと描いたり作ったりしていますが、いくつになっても師匠には遠くおよびません。
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- 2017/05/28(日) 19:44:01|
- 見聞・出歩き
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