シチズン
新本中三針(S中三) 4
1950年代のシチズン中三針のムーブメントです。

それでは基本に倣いテンプを外します。

露出したアンクルを突っついてもはじきません。ということは悪い箇所はもっと奥ということになります。
ゼンマイをほどいてアンクルを外しました。

続いて真ん中の二番受けを開けます。

三番以降の車を外します。

さらに香箱受け、その他を外しまして丸裸となります。

このあと、部品を洗いまして組みたて、輪列上がりの状態です。

りゅうずを回してみて全体の連動が確認できたら、脱進機をつけて完成です。
…と思ったら、アンクルが動きません。

ツメ石の出具合が悪かったようです。
どうりで解体前もうまく動かなかったわけです。
石の位置を調整しながら、組み立てまして、正常位置にたどり着きますと…

パチン!パチン!とはじくようになりました。
これで、ここまでは正常に復活、残るはテンプのみとなります。

ところがテンプがダメでした。天真が減っていたようです。組んでもクラクラしてしまいます。
ということで実用はあきらめまして、ケースに納めました。

観賞用ベルトをつけまして、シチズン新本中三針(S中三)の旧タイプです。

昭和20年代の余韻が残る個性的装飾性を宿したケースラインに、数字まじりの球面文字板が時代を感じさせます。これまで控えてまいりました同系三種の中の最古参です。
それではここまでの同系統三種類を見比べてみましょう。

ぱっと見ますとどれも同じに見えますが、左から古い順に並べてあります。
まず一番左がS中の古いタイプで今回控えたものです。

昭和30年(1955)に発売されたS中三針11石の機械。(ここからの発売年は機種の発売年でありまして、個体のそれとは違うことをあらかじめお断りしておきます)
テンプはチラネジ(金色のわっかをテンワ、周りについている小さなネジをチラネジといいます)つきで、まだ耐震構造はありません。角穴車(上のほうの大きな白い板状歯車)の飾り輪は一本。
次は昭和31年(1956)17石モデル。

テンプは上と同じチラねじつきですが、ここで耐震構造“パラショック”が入ります。それとガンギ(真ん中三箇所ルビーの左下)に調整板がつきました。角穴車の飾り輪は二本ですが、この意味はわかりません。
最後は最終機種“マスター”昭和34年(1959)19石。

テンプからチラネジが消えました。耐震構造はそのまま。三番車(真ん中三個のルビーの左上)にも調整板がつきました。
このように一年、また一年と標準原機を改良しながら製品を育てていった様子が、並べてみるとわかります。

外観デザインも、三者三様。
温かみという観点では古いほうがいいですね。丸っこいふくらみは安心感を与えますし、数字と棒字がミックスされた文字表記はどことなくユーモラスです。
真ん中になりますと、すべて棒字にそろえられシンプルな顔立ちになるものの、やはり丸っこい文字板と金色使いが温かみを保っています。
右のマスターになりますと、細縁で薄型、モノトーンでまとめたシンプルダンディ。
これらのシリーズにはそれぞれ金色ケースなど、さまざまなバリエーションは存在するので、一言では述べられませんが、上記三点だけを見比べますと、時代を追うとともにデザインも近代化しているなと感じます。
本日の控え
シチズン 新本中三針(S中三) 11石 推定1955年 でした。
年代を推定としたのは、刻印形式が古いため個体の特定が出来なかったからです。

戦後10年ほどで紳士の腕を飾った国産時計のやさしい顔立ちに、復興へのエネルギーが宿っているように見えるのは気のせいでしょうか。
スポンサーサイト
テーマ:趣味と日記 - ジャンル:趣味・実用
- 2017/11/15(水) 11:05:18|
- 時計
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0