TIMEX AUTOMATIC 1
毎度おなじみジャンク時計のバラバラ残酷物語、うまくいったら生き返るというおかしな話でございます。
今回は、TIMEX〈タイメックス〉の自動巻き。
バンド付きの完成品ですが、先カン部、つまりバンド取り付け部がガタガタに緩んでしまっているうえ、りゅうずはまったく動きません。おそらく錆か皮脂で固まっている模様。見た目はそうでもないけれど、内臓をやられているオッサンのようですな。おっと、ここは笑えない。
横見です。
形に無駄がありません。
ケース側面立ち上がりが、ゆったりとしたアーチを描き、その中心線よりわずかに下付きになったりゅうずの安定感がいいですね。
裏を見ましょう。
裏蓋には材質刻印のみが打たれています。
そしてバンド取り付けの緩みがよくわかります。先カンの突っ張り羽根が用を成していませんし、このまま腕に巻いたりしたら手首を切る恐れもあります。
まずはここから外してまいろう。
ケースにつなぐバネ棒もひしゃげております。でもね、これこそ長年の使用による変形ですから、可愛がられていた証拠ともとれます。古物〈ふるもの〉好きがニヤける瞬間です。
バンドは後ほど直すとしまして、裏蓋を開けました。
“CASE GREAT BRITAIN TIMEX”ですと。TIMEXといえばアメリカのメーカーですよね?ここにでてくる“CASE”とは、“側製造”なのか“側付け”なのか?この辺が難しい、TIMEXの歴史の中で、インガソル系の英国工場があったといわれてますが、この時計が生まれた時点、おそらく1970年代?にどのように関わっていたのかは、残念ですがわかりません。
先に進んでみましょう。
こちらは、中身です。TIMEX M32 13型 18000A/h パワーリザーブ38時間。
簡素でございます。色気も装飾性も皆無であります。むしろ硬派な機能美といえましょう。これは前回控えました“まんじゅう時計”に通じるものがあります。
(時計道楽192) 巻真まわりをご覧ください。
ガッサガサに錆びております。これではりゅうずが回せません。やはり空気の通り道であるりゅうずパイプのあたりが一番錆を涌かすのでしょう。
…? あら?ここではたと気が付いた。
巻真が抜けなけりゃ、中から機械が取り出せないではないか。さて、どうしたものか?ここで、ペン型の錆取り剤CRC556を染み込ませながら、爪楊枝でこすり落とし、シコシコ…
あら、ポロリとりゅうずヘッドが取れました。取れてみてまた発見、普通はりゅうずに巻真がねじ込まれていますが、このモデルは巻真に平行溝が彫ってあり、りゅうずに圧入していたようです。りゅうずヘッドを交換するという考えを捨て、合理性に徹した設計が垣間見えます。
引き続きめげずにシコシコ錆を落とし、先端の細いヤットコで巻真をつまんで、ヤットコさっとこ、ずらしてみたら…
ガサガサガサ…錆びた刀のように巻真が抜けましたぁ。ここでひと息。
でも、中の機械が取り出せません。普通は側止めネジとか、補助リングがあるものですが、そのどれもが見粗りません。
そんな中、これは?
不自然にゆがんだ何かの輪っか。これが機械を固定しているリングとみました。
内側に変形した部分に工具を引っかけて内側に引きますと… びよよん!
ほうら、出た、ハリガネムシ。
いえ、これこそ極めてシンプルなムーブ固定構造。なるほど、頷いてしまいます。こんな頼りない針金みたいなバネで機械を側に押し上げられるのですから。これぞ最低コストの中枠といえましょう。何しろ針金一本ですから。
中身を取り出しました。
チョコレート色の文字板は、状態が良さそうです。外周が球状に絞られているボンベ文字板です。生地は旭光目付に恐らく銀メッキ、半透明の茶色塗装につやのあるクリアーコーティングと見ました。この時計、、おそらく40年以上前の物とお察ししますが、極めて状態が良い、表面クリアーの質が良いのか厚いのか、出来立てのような発色を楽しむことができます。
針と文字板を外して、時計本体の方を見ましょう。
なんだか、ゆるキャラのお目目のような穴は、錘の取り外し用の機能穴です。う~ん、やっぱり無駄がない。
では、時計のバラシを次回にということで、今回はこの辺で失礼します。
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2019/01/10(木) 11:02:49 |
時計
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