RADO President 1
壊れ物ではなさそうですが、古い手巻きの時計です。

やや小ぶりの男持ちですが、今回はまず、このバンドのお話から始めましょう。
本体はメッシュですが、留め方が実に面白いんです。

腕を通したら、バンド先端を投げ縄のように引いて締め付け、リングを支点に折り返して受け金具に引っかけて留めるんです。アーミーモデルで見られるようなナイロンリボンの留め構造を金属でやっちゃうという大技。これはメッシュが薄くて柔らかくないとできない構造です。
次の写真は留め金の刻印です。

ドイツ製“FISCHER〈フィッシャー〉”の刻印です。
留め金の側面もイカしてます。

上の写真は受け金具です。フリータイプ(フリーアジャスト)中留めの受けと同じようにスライドして全体の長さ調整をします。
留め金を組みますとこのようになります。

スナップでパチンと嵌まります。
そして特筆すべきは、このメッシュの柔らかさですね。

どうです?このクネクネ具合。おそらく本品は1950年代あたりのものと思われますが、現在、ここまで柔らかいメッシュは中々おめにかかれません。柔らかいメッシュの線材は細いゆえに切れやすくなります。という事は使用者に怪我のリスクを与えることになりますから、多くのメーカーは作るのを躊躇し、次第に消えてゆきました。だから今のメッシュは少し固くできており、留め方は美錠かフリータイプとなるわけです。もっとも金ムクの世界にはあるかもしれませんが、私には縁がないのでわかりません。まあしかし、古いものを集めていると、たまにこういう出会いがあるからやめられません。
では、時計本体に目を移しましょう。

側外径31ミリほどの小ぶりで、手首の細い私にはちょうど良い寸法です。
裏側です。

裏蓋外径から余裕を持たずして、ほぼ垂直に刈り上げ、頃合いの所でアシを挽き落とした無駄のない側形状。

裏蓋は内ネジ式、刻印は、浅めのプレスでロゴの書体を活かしてます。六か所ある蓋のツメ掛けは浅くて、苦労のキズ痕が微笑ましい。
では裏蓋を開けましょうと思いましたが、かなり固い。ここで取り出しましたるはエポキシパテ。いつも怪獣を作っている材料です。

裏蓋にメンソレータムを薄く塗りまして、…と申しましてもキズを治すためではありません。人間じゃないんだから。つまりは離型剤です。そして練ったエポキシパテを蓋に押し付けまして、富士山型に盛り付けます。山の頂上はつまめる形状に四角くしましょう。
そして一晩硬化させまして、つまみ部分をペンチでつまみ、グっと力んだら…

カチっとほどけて、スルスルスルっと蓋が開きました。
今回は木工用の軽いタイプのパテを使いましたが、なかなかいいですね、浅い刻印まで転写されています。

図らずも専用オープナーができました。邪魔になりそうですが、締める時も使いますんで良しとしましょう。
話が長くなりました、時計の中身は次回となります。
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- 2020/02/12(水) 10:40:14|
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