フランケンシュタインの囁き
シュミットの逆襲 3
死体をつなぎ合わせて一人の人間を作るように、二つの廃物から一つの時計を作りたい。そんな欲望から始めた作業だが、今のところはイメージ通り進んでいる。
動力の巻き上げ機構まで出来上がった。

ここから時計輪列を組むのだが、それらを受ける石と止めリングをかき集めて取り付けよう。

元々欠けていて足りなかった箇所は、解体したもう一つの個体から補えば、一応全個所を埋めることができそうだ。

時計輪列を組む。

輪列は痛快に回るのだが、アンクルをセットすると、大きさの割にテンションは今ひとつだ。動力ゼンマイがだいぶ弱っているとみえる。
最後はテンプだが、ここがまた問題だらけで、骨格は元の物を使おう。

なるべく状態のいい部品を集めて組んでみるのだが…

動きはどうも今ひとつである。しかし、二番車をピンセットで後押ししてやればよく動くので、やはり動力ゼンマイの老化が原因のようだ。
おまけに緩急針を抑えるバネも取り付かない。ネジ穴の位置が違うのだ。やはり同じに見えても昔の物はすこしずつ形が違ってい簡単に互換性を語れない。仕方が無いので新しく一つ穴を開けて取り付ける。

機械部分はこれで組み立てがそろった。
文字板と針をつける。

真鍮針の窓にクリスタルを嵌め込み、おもわずニヤける。
側に機械を組む。

銀側の無数の傷は、人の皴に同じ、100年の時代を感じる。
あとは、頃合いのガラスを探して、裏の枠に嵌めたら完成としよう。


蓋つきオープン、R・シュミットが形になった。
一方では、使われなかった時計の残骸が哀れだ。

これらも捨てずに一応形に戻し、モルグで保管しよう。
あぁ、フランケンシュタインの囁きに試みてはみたものの、蘇生は叶わず、見るだけのものになったが、まあいいだろう。

部品のそろった個体となったのだから。
だがしかし、執念深く不具合を追求すれば、いつの日か蘇生も可能となるだろう。金属でできた時計という代物は、それができるから面白い。

100年前の個体を蘇生する。人間ではそうはいくまい。ゲノム研究やAI復元が可能になったとしても、それは新生物であって、時代そのものまで蘇らせることは不可能だからだ。
時計を見よう、100年前のそのものが目の前にある。もし私が超能力捜査官だったなら、手に取れば100年分の景色が瞼に映り、めくるめく時の旅ができただろう。それは愉快なことである。
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テーマ:趣味と日記 - ジャンル:趣味・実用
- 2021/02/10(水) 10:18:36|
- 時計
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| コメント:2
いつも楽しく拝見しています。
同じ場所を撮り続ける定点撮影ってのがありますが
あれを現在時刻から取り敢えず江戸時代末期くらいまでガーっと巻き戻してみるような、そんな映像を誰か作らないかなぁと夢想しています。大正時代までは郊外だった渋谷駅前なんかで作ったら面白いだろうに。
- 2021/02/10(水) 14:28:41 |
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- キムラ #-
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お世話になります。
定点カメラを光より早く地球から遠ざけたら、もしかして逆行映像が撮れるかもしれませんね。
でも太陽に届いたころでようやく8分ですから明治まで戻ろうとすると大変ですね。、
- 2021/02/10(水) 19:14:30 |
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- 柊horii #-
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